ときめくような香り

トントン……トン……トン……。

水道の蛇口から零れ落ちた水滴がテンレス製の流しを打つ。

 

「あ~あ、なんだかなぁ……」

代わり映えしない日常に飽きていた。

 

子供達も手のかからない年頃だ。

週末というのに、我が家には他にだれもいない。

 

何か、胸がときめくような、普段とは違うことがやってみたい。

 

ピンポーン。

配達だった。

 

厳重に包装された箱の中から商品を取り出す。

シンプルだけれどお洒落なボトルデザイン。

オーガニックを売りにしたイタリアブランドのシャワージェル。

 

「贅沢かも……だけど……たまには、いいよね」

お母さんやってても女を捨てたわけじゃないもの。

 

蓋を開けた瞬間に、上質な甘さと高揚感を得られるような華やいだ香りが広がっていく。

「あっ、そうだ!」

 

ちょっとした閃きだった。

「よし、お風呂でちょっと(文章を)練りますか!」

 

その夜、ブログを立ち上げた。

シャワージェルの至福の魔法に酔いしれながら物語を綴る。

だれかの目にとまるように祈りを込めて。



 

にほんブログ村 にほんブログ村へ

One Reply to “ときめくような香り”

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です